悲しみのミルクが受賞した金熊賞ってどんな賞?

悲しみのミルクという映画が受賞した「金熊賞」について詳しく知っていますでしょうか?

ベルリン映画祭金熊賞受賞「悲しみのミルク」

 2009年ペルーの映画作品であるこの『悲しみのミルク』は興行的にはそこまで奮ったとは言えないものの、第59回ベルリン国際映画祭においては金熊賞を受賞し、更には同年にアカデミー賞の外国語映画賞にまでノミネートされておりました。更にはゴヤ賞というスペインの外国語映画賞にもノミネートされた上、サンダンス映画祭などといった有名映画祭で数多く上映されておりました。

 本作は、非常にダークな始まりだしであることと、作品の全体にあるテーマ自体も非常に重いものであることから、非常に人を選ぶ映画にはなっているのですが、しかしそれでも、主人公を支える周りの人物達によって、そのどん底の世界が優しさを取り戻していくのには、今までの作品に無かったような感動を覚えました。そんな、静寂の中に潜む悲しみに打ち勝ち、あたらな段階へと進んでいくヒロインに対しても非常に好感を覚える作品になっています。

 物語自体は母親の苦悩が母乳を通して子供に伝染してしまうという「恐乳病」という南米ペルーの言い伝えを基にして、残酷ながらも感動的なストーリーを紡ぐまるでお伽話かのような物語です。恐乳病におびえるヒロインの姿や行動から、ペルーの激動の歴史が見えてくるところもこの映画のいいところと言えるでしょう。

あらすじ

 母親を失った若い娘ファウスタ(マガリ・ソリエル)は母が息を引き取る際に、とてつもなく不気味な歌を聞かせられます。それは過去の戦争の記憶を謳ったもので、その歌を歌い終わると母親は生きを引き取ります。貧しい暮らしの中で懸命に生きているファウスタは母を埋葬する為のお金がなく、仕方がなく、遺体を布でくるみ家の中においておくのですが、次第に異臭を放ってくる母親を故郷の村に埋葬するべく、ファウスタはリッチなピアニストの家で家政婦として働くことにしました。スランプに陥っていた女のピアニストはファウスタが歌っている(時折口ずさんでいる》歌を聞いて、これに興味を持ち始めます。そして彼女がそれを一曲歌い終わる毎にネックレスの真珠を一粒ずつ対価として支払い、ネックレス一連分の真珠が溜まってきたら、その時点でネックレスとしてまとめて渡すというふうに約束をします。しかし、ファウスタは男性は勿論のこと、その女性ピアニストに対しても、雇い主であるにも関わらず心を開くことが出来ないのでした。そんな彼女は母乳を通して母の体験した苦しみを受け継ぐ病、「恐乳病」に侵されていると信じており、何事にも恐怖心を抱いています。そんな呪いのような自己暗示と戦っていき、自らの呪いから解き放たれるまでを描いたヒューマンドラマです。

キャスト

  • ファウスタ: マガリ・ソリエル
  • アイダ: スシ・サンチェス
  • ノエ: エフライン・ソリス
  • マリノ・バリョン

スタッフ

  • 監督 クラウディア・リョサ
  • 脚本 クラウディア・リョサ
  • 製作 アントニオ・チャバリアス
  • ホセ・マリア・モラレス
  • クラウディア・リョサ
  • 音楽 セルマ・ムタル
  • 撮影 ナターシャ・ブライエ
  • 編集 フランク・グティエレス
  • 配給 東風

悲しみのミルクの魅力

 よくラテン系の映画というと熱く情熱的なイメージを抱いてしまうものですが、本作に関しては非常にお伽話的で陰鬱なストーリーになっておりました。物語のテーマとなるのは「お姫様が自分の手でかけた呪いをいかにして解いていくか」といった感じです。これは、周りから言われたり、恐乳病というペルーの悲しい歴史の後遺症のようなありもしない病に悩まされたり、暴力の時代における、女性の苦難の伝承が、母から子へ母乳を通じて託されてしまっているのでないか、歌によって託されてしまっているのではないかという思いすごしによって少しずつ彼女を蝕んでいきます。ただ、そんななかでも健気に頑張っていく、彼女と、そしてそれを暖かく見守る周りとの対比が非常によく出来ていて印象深かったです。流石、ベルリン国際映画祭で金熊賞を取っただけあるなという作品でした。

物語の世界観の根底にあるもの

 物語の世界観の根底にあるものはやはり暴力の時代の女性の苦難の伝承が、様々な要素によって受け継がれていってしまっているというところにあるかと思うのですが、これに関しては、物語の時代背景が、センデロ・ルミノソと呼ばれるペルーの極左武装組織が猛威を奮った後の時代を描いているからです。このセンデロ・ルミノソですが、毛沢東派共産党を支持し、スペインで活動していたのですが、ラテンアメリカ全体でも独創的なマルクス主義思想家として活動していたホセ・カルロス・マリアテギが、インディヘニスモ(ラテンアメリカのペルー先住民の思想》に近い立場から独自の革命理論を説いた理論書、マリアテギの輝ける道にちなんで命名されたそうです。正式な名称としてはペルー共産党があり、一時期、ペルーの全土三分の一を制圧しておりましたが、その軍事的な活動や統治の冷酷さから「南米のポル・ポト派」とも呼ばれ恐れられていたというのです。この彼らの起こした活動によって虐げられた歴史があり、そこから開放されてなおも、人々の中に傷跡を残し架空の病がまことしやかに語られるといった状況を作り出してしまっていたとも言えるのでしょう。

ベルリン国際映画祭「金熊賞」

 そんな、第59回ベルリン国際映画祭において金熊賞を受賞した本作ですが、このサイトでは「悲しみのミルク」の他にも「ベルリン国際映画祭にて金熊賞」を受賞した作品に焦点を当てて紹介していきます。特に日本の作品やアニメなどについても詳しく取り扱っていきますので、興味のある方は是非そちらも見てみてくださいね。